家族になろうよ!
こんな子供に諭されてしまった。
でも、だいぶ肩の力が抜けた気がする。
難しくしないでいいんだ。
「あとは、そうだな。優子は寂しがり屋だから、たくさん甘やかしてあげて!」
「それは……ハードルが高いな」
「年上なんだから、それくらいやんなさいよ。それより」
とんと油断していたら、胸倉を掴まれ引き寄せられ、鼻と鼻がくっつきそうなほどの距離で凄まれた。
「この期に及んでまた優子を傷つけるようなことがあったら、……」
以降、女の子が発していいような言葉ではなかったので、記憶から削除することにする。
つまりは、優子を泣かせたら承知しないってことだったんだが、そんな下品な言葉、どこで覚えたんだ。
「わ、分かった」
俺がひっくり返りそうな声でうなずくと、心愛は満足そうに鼻で笑って俺を打ち捨てた。
ひどい。
女嫌いが加速しそうだ。
「これで優子のことは一安心ね。じゃ、あたし帰るから」
残った茶を飲み干し、もう一度優子の寝顔をのぞいてから、心愛という名のハリケーンは過ぎ去って行った。
思いきり振り回された。
殴られたり蹴られたりしたところが痛い。
たぶん痣になるだろう。
飛んでもない凶暴な子供だ、でも。
「良い奴、だよな……」
俺が心を入れ替えたのを感じ取ってからは、俺をチビだのクズだの罵倒することはしなくなった。
優子のことが、余程大事なんだろう。
幼稚園のころからの付き合いだって言ってたから、俺と凌みたいなもんか。
優子も、心愛がいてくれたおかげで、ここまでやって来られたのかもしれない。
そんな子に、俺は認めてもらえた、ってことでいいんだよな?