家族になろうよ!

あの事件のことは早く忘れたいし、口に出したくもない。

ただ、あれが全部俺の物だと思われているままなのは不名誉だ。

中身を楽しんだかどうかは別として、所有しているのか、預かっているのか。

微妙な違いではあるが、この二択で受ける印象の差は大きいと思うのだ、俺は。


今、優子は漫画に集中している。

さりげなく誤解を解くには、絶好の機会なのではないだろうか。

俺はできるだけ世間話をしているようなテンションで、話を切り出した。


「あの、この机の下の箱なんだけど……」


「大丈夫」


即答。

優子は漫画から目を離さないまま言った。


「男はそういうものだって、心愛が言ってました」


「そ、そう……」


終了。

言い訳する隙さえ与えてもらえなかった。

あのマセガキ、優子に何を吹きこんでんだ。

ていうか優子もアイツに話したのかよ。


いくつであっても、女って怖えな。


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