家族になろうよ!


休日のショッピングモールは親子連れで大賑わいだった。

あちこちから子供の泣き声や喚き声が聞こえてくる。

これだけ人がごった返しているのなら、知り合いがいても気づかないまますれ違ってしまいそうだな。


「なにか見たいものあるか?」


欲しいものあるか?と聞けないのが貧乏人の悲しいところである。

しかし優子も心得ているもので、金をかけずに長時間楽しめる場所をリクエストしてきた。


「本が見たいです」


かくして俺と優子は本屋へ向かった。

本屋といってもCDやDVD、ゲームに雑貨、本だけでなくいろんなコーナーがあって、優子は店の前で悩み始めた。


「時間はあるんだから、端っこから見ていけばいいだろ」


「……じゃあ、雑貨から」


本じゃないのかよ。

まあ、今日はとことん付き合うと決めてるから、思う存分好きなようにしてくれ。

しかし、行き先を決めたのに優子はまだ動かない。

どこか一点を見つめている。


「おい、どうしたんだ」


視線の先をたどっていくと、こちらを見つめている、白いワンピースを来た小柄な美少女が一人。

その胡桃色の髪、大きな瞳、見間違えようもない。


どうして、よりによって。


「服織女くん?」


こんな所で、早乙女那美と鉢合わせてしまうなんて。


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