家族になろうよ!

どうでもいい奴なら知らないふりもできたのだが、彼女を無下にすることなんてできない。

どうしよう、何て言おう、混乱している間に早乙女那美がこちらへ駆けてきた。


「偶然だね!」


「ほ、ほんとに……どうしてこんなところに?」


って、本屋に来る理由なんて決まってるのに、馬鹿なこと聞いちまった。

案の定、参考書を買いに来たらしい。

二言、三言交わしたあと、彼女はやっと優子が俺の連れであることに気づいた。


「こちらは……服織女くんのお姉さん?」


ここでもやっぱり、俺は弟なのか……。


「はじめまして、服織女くんのクラスメートの早乙女那美です。お世話になってます」


ショックを受けて言葉の出ない俺の隣から優子は一歩前に出て、深々とお辞儀をした。


「妹の優子です。兄がいつもお世話になってます」


兄と妹。

優子は、そう言い切った。

日記でなく実際に本人の口から聞いたのは、これが初めてだった。


「……いもうと?」


何も知らない早乙女那美は、笑みを浮かべたまま固まっている。


「私、先に行ってます」


気を利かせて優子が店の中へ入って行った。

これはもう、覚悟を決めるしかない。


「早乙女さん、ちょっと話したいことがあるんだけど、時間あるかな」


早乙女那美は戸惑いながらも、こくんとうなずいてくれた。


< 143 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop