家族になろうよ!
どうでもいい奴なら知らないふりもできたのだが、彼女を無下にすることなんてできない。
どうしよう、何て言おう、混乱している間に早乙女那美がこちらへ駆けてきた。
「偶然だね!」
「ほ、ほんとに……どうしてこんなところに?」
って、本屋に来る理由なんて決まってるのに、馬鹿なこと聞いちまった。
案の定、参考書を買いに来たらしい。
二言、三言交わしたあと、彼女はやっと優子が俺の連れであることに気づいた。
「こちらは……服織女くんのお姉さん?」
ここでもやっぱり、俺は弟なのか……。
「はじめまして、服織女くんのクラスメートの早乙女那美です。お世話になってます」
ショックを受けて言葉の出ない俺の隣から優子は一歩前に出て、深々とお辞儀をした。
「妹の優子です。兄がいつもお世話になってます」
兄と妹。
優子は、そう言い切った。
日記でなく実際に本人の口から聞いたのは、これが初めてだった。
「……いもうと?」
何も知らない早乙女那美は、笑みを浮かべたまま固まっている。
「私、先に行ってます」
気を利かせて優子が店の中へ入って行った。
これはもう、覚悟を決めるしかない。
「早乙女さん、ちょっと話したいことがあるんだけど、時間あるかな」
早乙女那美は戸惑いながらも、こくんとうなずいてくれた。