家族になろうよ!
「お医者さんや社長さんは偉いけど、服織女くんのお父さんがやってるトラックの運転手さんも偉いよ。
いろんな職業の人が一生懸命働いてくれてるから、私達は不自由なく生きていけるの。
どんな小さなことだって一つでも欠けたら世の中回らなくなっちゃう。
働いてる人は、みんな偉いんだよ。
もらえるお金の量は人それぞれかもしれないけど、それは全部かけがえのないもので、比べられるものじゃないと思う。
服織女くんをお腹いっぱいにしてくれて、学校に通わせてくれてる服織女くんのお父さんはすごいよ。
だから、服織女くんが隠さなきゃいけないことなんて一つもないんだよ」
丁寧に話してくれた彼女の考え、思いに触れて、はっとした。
俺を差別していたのは、もしかして俺自身だったんじゃないだろうか。
だとすると、俺が今までしてきたことは、親父に対してとても失礼だったってことになる。
感謝しているなら、尊敬しているなら、親父のおかげで成り立っている今の生活を誇るべきなのに。
狭い世界に囚われて、一部の価値観に流されて、俺は本当に大切なものを蔑ろにしていたんだ。
「……分かったようなこと言って、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。俺が間違ってたんだから……」
「そんな、責めるつもりで言ったんじゃないの。ただ私は、服織女くんに自分を卑下しすぎないでほしいって思っただけだから」
どこまで優しいんだろう、この人は。