家族になろうよ!
「昨日部活の帰りに見たぞ。あの日、体操服を届けにきた女とお前が、並んで歩いてるところ。それだけじゃない、慣れた感じで一緒にボロい団地に入ってくのも、この目でしっかりと見たんだ!」
昨日。
ショッピングモールから帰ってきたところを見られていたんだ。
全然気づかなかった。
「部活の仲間も目撃してる!根も葉もない噂じゃない、俺は嘘なんかついてなかったんだ!」
それは俺じゃなく、教室にいる全ての人間に向かって放たれた言葉だった。
必死の形相で、身の潔白を証明しようとしている。
コイツの勝手な思いこみや不必要なまでのからかいは頂けないが、それを助長させたのは、端から信じてもらえないと決めつけ、怯え、本当のことを語らなかった俺自身なんだよな。
コイツとしては実際に見たことを話しているだけなんだし、凌に無理矢理黙らされたことも相当腹に据えかねていたのだろう。
始業のチャイムまであとわずかという教室には、もうほとんどの生徒がそろっている。
みんなが動揺し始めたのを感じ取った凌が動こうとするのを手で制止し、俺は立ち上がった。
「お前が言ってることは、本当だ。お前は嘘なんかついてない」
「やっと認めたか。ほら、俺の言った通りだろ!」
勝ち誇ったように騒ぎ立てるコイツの鼻を折るようで悪いのだが、俺はもう何も恐れない、だから言える。
「でも、間違ってることが一つある」
「あ?何がだよ」
「俺と一緒にいたのは、一緒に住んでるのは……」