家族になろうよ!
そして、起きたら翌日の夕方だった。
なんてこった。
いくら疲れていたとはいえ、半日以上も寝てしまうとは。
しかも、全然眠った気がしない。
さっき寝たばかりのつもりだったのに、タイムスリップしてしまったような気分だ。
でも固まりかけている体が時間の流れをしっかりと俺に教えてくれている。
つまり、この事態は。
「……やべぇ」
大失態だ。
どれだけだらしない人間だと思われただろう。
だらしないのは事実だが、それでも普段はここまでひどくない、もうちょっとはマシな生活をしている、朝から洗濯だってしているのに、たまにだけど、と頭の中で言い訳していてもしようがない。
寝過ぎてふらつく体を叱咤して、人の気配がしている居間へ向かった。
親父はたしか今日から仕事だと言っていたからいないとして、あの二人にどんな顔で何を言えばいいのか、逆にどんな顔で何を言われるのか、ぐるぐるとどうしようもないことばかり考える小心者の自分につくづく呆れながら、でも逃げたくてたまらなかった俺の葛藤は、目に飛びこんできた光景によって一瞬で吹き飛んだ。
どこかの若妻が、うちの台所で料理をしている。
白のカットソーに紺のスカート、その上には淡いブルーのシンプルなエプロンをつけ、足元はくるぶし上十五センチほどの白い靴下、艶やかな黒髪は低い位置で一まとめにして右の肩口に流している。
絵に描いたような主婦の態。
誰だかすぐに分からなかった訳じゃないが、それにしても驚きすぎて口がぽかんと開いた。
居間の入り口で突っ立っている俺に気づいた若妻……じゃない、優子は、やはり無表情で言った。
「おはようございます」