家族になろうよ!

この時間にその顔で、こうも堂々と朝の挨拶をかまされると、嫌味にしか聞こえない。

もちろん全面的に悪いのは俺なんだけれども。


「おはよう、……」


いかん、つられて「ございます」まで言いそうになった。

やっぱりこの迫力で小学生はないだろう。

小学生の子供がいてもおかしくないくらいだ。

あまりの衝撃にクラクラしつつ、あの独特の高い声がしないことに気づく。


「あれ?彩花さんは……」


「仕事です」


「そ、そうか」
昨日の今日で、もう仕事に行ったのか。

女の子……じゃない、女性なのに、大変だな。

それなのに俺ときたら。

罪悪感を紛らわせたいためか無意識に頭を掻いた拍子に、視線が優子の手元へ下りた。

細いネギを小口切りしている。

なかなか慣れた手つきだ。


「それ、何やってんの?」


「ネギを切ってます」


いや、それは見れば分かるだろ。


「そうじゃなくて……何を作っているのかな、と」


「お味噌汁を作りました。このネギはお椀に注いだあとに入れます」


なるほど。

しかし、なんで優子がそんなもの作ってるんだ。


「料理は彩花さんがするって言ってたような気がするんだけど」


「四日分のおかずは朝から作っていってくれました。ご飯を炊くのとお味噌汁を作るのは私の役目です」


「四日分?何でわざわざ朝からそんな……」


大変なことを、と言いかけて、ふと思い当たった。

あの見た目だから、彩花さんの仕事は親父の会社の事務か何かだと思いこんでいたが。

運送会社、四日分、このキーワードから導き出されるのは。


「その、彩花さんの仕事って……?」


「トラックの運転手です」


< 54 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop