家族になろうよ!
この時間にその顔で、こうも堂々と朝の挨拶をかまされると、嫌味にしか聞こえない。
もちろん全面的に悪いのは俺なんだけれども。
「おはよう、……」
いかん、つられて「ございます」まで言いそうになった。
やっぱりこの迫力で小学生はないだろう。
小学生の子供がいてもおかしくないくらいだ。
あまりの衝撃にクラクラしつつ、あの独特の高い声がしないことに気づく。
「あれ?彩花さんは……」
「仕事です」
「そ、そうか」
昨日の今日で、もう仕事に行ったのか。
女の子……じゃない、女性なのに、大変だな。
それなのに俺ときたら。
罪悪感を紛らわせたいためか無意識に頭を掻いた拍子に、視線が優子の手元へ下りた。
細いネギを小口切りしている。
なかなか慣れた手つきだ。
「それ、何やってんの?」
「ネギを切ってます」
いや、それは見れば分かるだろ。
「そうじゃなくて……何を作っているのかな、と」
「お味噌汁を作りました。このネギはお椀に注いだあとに入れます」
なるほど。
しかし、なんで優子がそんなもの作ってるんだ。
「料理は彩花さんがするって言ってたような気がするんだけど」
「四日分のおかずは朝から作っていってくれました。ご飯を炊くのとお味噌汁を作るのは私の役目です」
「四日分?何でわざわざ朝からそんな……」
大変なことを、と言いかけて、ふと思い当たった。
あの見た目だから、彩花さんの仕事は親父の会社の事務か何かだと思いこんでいたが。
運送会社、四日分、このキーワードから導き出されるのは。
「その、彩花さんの仕事って……?」
「トラックの運転手です」