家族になろうよ!
初めて立ち入る高等部校舎、一年A組の教室。
造り自体は中等部と同じだが、漂う空気が少し違う気がする。
その違和感が受験に対する緊張感ゆえだと気づいたのは、教室の後ろに生徒の名前が記されているプレートが成績順に掲げられていたからだ。
おそらく、テストの度に順位は入れ替えられるのだろう。
臆病者の俺は、先頭に凌の名前があるのを確認したあと、末尾の方から自分の名前を探した。
三十五、三十四、三十三……二十五、二十四、二十三……あった。
「十七番……」
実に微妙な順位だ。
「下品なことするね、この学校。見損なったよ」
隣で一番が憤慨している。
まあ、そんな文句に説得力を持たせられるのはお前か二番か三番の奴くらいだから、言いたいだけ言っていいんじゃないか。
そうか、ここはそういうところだったんだな。
今更実感しながら、出席番号を頼りに自分の席を見つけ、鞄を机の横に引っかけた。
「きゃあ、矢神くんと同じクラス!」
「服織女くんもいるよ!私達すごいラッキーじゃない?」
「わあ、服織女くん制服おっきい!ウケるー」
……聞こえてるぞ、背後の女子共。
このピリッとした空気の中で、よくそんなに能天気でいられるな。
後ろのプレートを見てないのか。
お前らの名前もバッチリランク付けされてるんだぞ……俺はお前らの名前なんて知らないけれど。
大きな内緒話が耳に触る。
イライラするな、もう。……
「服織女くん、だよね?」
「あ?」
つい、苛立ちのままに乱暴な返事が口をついて出た。
しまった。
我に返ると、隣の席にいる女子が驚いた顔で俺を見ていた。
「ご、ごめん、あの、びっくりして」
しどろもどろで弁解すると、相手は強張った表情を緩めて。
「こちらこそ、ごめんね。突然話しかけちゃって」
その眉の下がった笑顔に、俺は胸を撫で下ろした。