家族になろうよ!


二人とも同じタイミングで朝食を終えたので、優子と一緒に部屋へ行くことになった。

優子の部屋は奥なので、必然的に優子は俺の部屋を通らなければならない。

優子はわざわざ「失礼します」と一礼して俺の部屋を横切って行った。

それを見ていて、自分以外の人間が縄張りに侵入してきた不快感を覚えたのと同時に、この感覚を味わうのが初めてであることに気づく。

優子が電気をつけて、カーテン越しに俺の部屋もほのかに明るくなる。

この淡い光を見るのも、引っ越しの日以来のような気がした。

思い返せば、優子はいつも居間にいる。

自室なんていらないんじゃないか。


制服のジャケットに袖を通したところで、カーテンがぼすぼすと鳴った。

これはノックだな。

返事をしてやると、小花柄のリュックを背負った優子が出てきた。

そうか、今日からそっちの学校も始まるのか。


「いってきます」


そんなこと、俺に言われても。

うなずくしかできない俺にまた一礼して、優子は出て行った。

そういえば、引っ越したせいで通っている学校が遠くなってしまい、バス通学をしなければならない、と彩花さんが話していたような気がする。

どうしてそんな大変な思いまでして、ここへ来たいと思ったんだか。

お世辞にも良い環境だとは言えないだろうに。

何度考えてみても、この疑問の答えは出ない。


おっと、もたもたしている暇はないんだ。

俺は体操服だけを引っ掴むと、骨の隙間を一つ残らず膨らますように限界まで背伸びした。


今日は、年に一度の審判の日。

身体測定と運動能力テストがあるのだ。

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