家族になろうよ!
金を節約するために洗濯は短時間で済ませたが、俺は長々とコインランドリーに留まった。
一人、また一人と、俺よりあとに来た客が帰っていく。
ここには雑誌が置いてあるし、いくらでも暇はつぶせる。
とにかく気持ちを静めたかったし、優子と二人きりになりたくなかった。
あいつは何なんだ。
俺を貶めて、そんなに楽しいのか。
悪気がないなんて理由にならない。
悪気もなく罪を犯す人間は、一番性質が悪いんだ。
思い出せば出すほど腸が煮えくり返る。
全然気が紛れないまま、外はとっぷりと暗くなってしまい、俺は渋々腰を上げた。
鉛をくくりつけられたかのように足が重い。
街灯の下、囚人の気分でのろのろと歩いていたら、前方から黒と白のツートンカラーの車――パトカーが走って来るのが見えた。
やましいことなどなくても体が強張る。
サイレンは鳴っていないから、事件という訳じゃないのだろう。
そのまま通り過ぎるだけだ。
そう思っていたのに、どういうことか、パトカーは徐々に減速し、俺の横につけて停まった。
「えっ」
窓が降りて、助手席から警官が顔を出す。
「お嬢ちゃん、こんな時間に一人で何してるの?」
ビビりまくった俺には、初老の彼が何を言ったのか、理解するまでに多少の時間が必要だった。
その間に警官は質問を重ねていく。
「その荷物は何?お嬢ちゃん、中学生?いや小学生かな?」
お嬢ちゃん。
この単語が自分を指しているのだと気づいた途端、頭に血が上った。