家族になろうよ!
「俺は男だ!」
「ええっ?」
警官は俺の出した声にぎょっと目を剥いた。
こんな見た目だが、俺の声は意外としっかり男なんだ。
それから財布に入れていた学生証を見せる。
「かっ、神世学園?」
更に驚いた彼は、口を間抜けに開けたまま、俺をまじまじと見つめてきた。
「高等部の一年生です。そこのコインランドリーで洗濯してきて、帰る途中ですよ。ほら」
袋から体操服やらシャツやらを出して見せると、警官はやっと正気を取り戻したらしい。
「た、たしかに神世の生徒さんみたいだね。でも夜道は危ないから、早く帰りなさい」
勉強ご苦労様!と敬礼した彼が助手席に合図を送ると、パトカーは車体を震わせ、走り去って行った。
事なきを得てよかった、と素直に喜べない。
小学生の、しかも女の子に間違えられ、補導されかけてしまった。
怒りとか、腹立たしさとか、情けなさとか、全部のメーターが振り切れてその先に残ったのは、虚しさだった。