シェリの旅路
日が暮れた頃、

バイオリニストは最後の音を

楽譜に記していた。


「……できた」


ヴァネッサは満足そうに呟いた。


出来立ての楽譜の角を

きれいに揃え、荷物をまとめて

外に飛び出した。


……これから天使が降りてくる。

やっぱり絵になるところで

弾かなきゃ。


バイオリニストはランプを

持って街を探検し始めた。


右へ行ったり、左へ行ったり

とにかくでたらめに前に進んだ。


彼女の視線の先に噴水が現れる。


石造りの白い大きな噴水。


この愛の国キュラテ国を

表現したような噴水だ。


島国キュラテ国の風土である

ハート型を型どり、

側面には天使エロース達が

彫刻されている。


噴水口には女神アフロディアの

像が置かれ、ハート型の

愛の泉に水を注いでいる。


「まぁ!ここはなんて

ピッタリなのかしら!

噴水に立ってメロディーを

奏でていると天使たちが

降りてくる。……いいわ!

ここで弾きましょう!」


ヴァネッサは噴水の上に立った。
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