シェリの旅路
ヴァネッサは頭から爪先まで

精神を集中してバイオリンを

弾いていた。


(……あと5小節。

天使は降りてくるかしら?)


曲が終わりに向かうに連れて

不安が増す。


(あと4……3……2……1)


何事も起こらず曲は

終わりを迎えた。



……天使が降りて来なかった。

あたしは神に選ばれたんじゃ

なかったの?


ヴァネッサは途方に暮れて

その場に座り込んだ。


『あー!いたー!』


妖精はヴァネッサの姿を

発見して彼女の元へ舞い降りた。


「よ、妖精!?」


ヴァネッサは自分の目の前に

降りてきた妖精を見て

驚愕の声をあげた。


(……あたし、天使じゃなくて

妖精をよんでしまったみたい。

ちょっと間違えたけど

あたしって天才ね!)


ヴァネッサは自分の才能を

評価した。


「魔力ないみたいだから

たぶん共鳴者ね」


トランクに乗ったフランは

ジオを乗せたまま下降してきた。


「弱そうだし安心だな」


ジオはヴァネッサを見て

ほっとして言う。


ヴァネッサは突然現れた

妖精と二人を見て呆然とした。

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