シェリの旅路

「あ、あなた達は誰なの？」


ヴァネッサは三人に問いかけた。


『恋する心を失った妖精キミ』


「信じる心を失った

魔法使いフラン」


(……キミもフランも妖精とか

魔法使いとか職業っぽいもの

あっていいな。

オレ、どうしよう？)


故郷を離れて１年間、ジオは

女性に養ってもらったり

金に困れば大工の手伝いや

レストランで皿洗いをして

なんとか暮らしていた。


色んな国を放浪していたので

職業らしい職業が

彼にはなかった。


「……えっと勇気の心を失った

鍵職人ジオランダス」


戻るかわからない実家の鍵屋

しか頭に浮かばなかった。


一応一通りの事は出来るので

嘘ではないが、

まだまだ未熟なのは自分でも

わかっているし、

今後、鍵を作る事はないかも

しれないので鍵職人と

名乗る事に抵抗と

家族への罪悪感があった。


三人の自己紹介を聞いた

ヴァネッサは


「あなた達、一体何なの？

この状況がわかるなら説明して。

あたしはヴァネッサ。

神に選ばれた

天才バイオリニストよ」


鼻高々挨拶した。