シェリの旅路
「フラン、そのコンパクト

どうしたの?」


「ショーンにもらったの。

かわいいでしょ?」


マリーアンの問いに答える。


私はショーンからの

初めての贈り物が嬉しくて

休み時間の合間に

いつも眺めていた。


「あら、もうおのろけ?

よかったわね」


マリーアンはコンパクトを

つつきながら言った。


私は授業中も

幸せに浸れるように

コンパクトを机の引き出しに

いれていた。


授業を退屈に感じたら

頑張れるように引き出しを

あけてコンパクトを見ていた。


私の大切なお守りだった。


私が席を離れた時

それは盗まれた。


そして愛しい宝物は

校庭の裏にある焼却炉の中で

面影がないほど歪んでいた。



私は犯人を探そうとは

思わなかった。


魔法使いが嫌がらせされること

なんて少なくないことだからだ。


私を嫌ってる人間なんて

この学校にはいくらでもいる。


ショーンを心配させまいと

この事件については黙っていた。


優しいあの人はきっと

自分の事のように心を痛めて

泣いてくれるから。


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