シェリの旅路
2番目の恋のお相手は

彼女の最愛のパートナーの

バイオリンのヴィラ、

3番目はヴァネッサが愛する曲

と恋愛ではなく音楽の話と

的外れだったが、

4番目でやっと人間が出てきた。


「4番目の人は、ヴィラの弦が

切れてしまった時に

張り直してくれたのが

きっかけでよく話すように

なった職人よ」


フランは、芸術家は恋と

惚れ込むの違いがないのかと

理解できないでいたが、

やっと恋の話が聞けそうで

安堵した。


「彼の弦を張る技術といったら

まさに神業。

ヴィラのメンテナンスに

通うようになって、

彼がデートに誘ってくるように

なったの。あたしが13歳、

彼が20歳の時の話よ。

大人だったけど職人だから

口下手で、バイオリンのこと

以外は全然ダメで。

愛はすぐに冷めたわ。

だけど、今も彼とは友達で

ヴィラのメンテナンスは

彼に頼んでるの」


ヴァネッサは

バイオリンケースを

そっと撫でた。
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