シェリの旅路
『ヴァネッサのいじわる。

……バイオリン弾くの?』


「こんな綺麗な星空は

ロマンチックでしょ?

この空にぴったりな曲が

浮かんできたのよ。

二人のムードでも盛り上げて

あげようかしらってね」


バイオリンに顎をのせる。


『楽譜に書かなくていいの?

いつもは先にそうするでしょ?』


キミはヴァネッサが

怒り出さないか不安になった。

いつもは、少しでも作曲の

邪魔をしたら、彼女の気が

すむまで延々と責められる。


「いいの。

今弾かなくてどうするって

いうのよ?

題、〝星空の恋〟」


言ってヴァネッサは頭に浮かぶ

楽譜の通りに奏で始める。


とても優しいメロディーである。


彼女が他人のために

初めて何かした瞬間だった。


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