一番星に祈る




この日の夜は、今日の中川の言葉を思い出していた。



―風邪ひかないようにね?―



俺は中川を傷つけた。

それは、消すことのできない過去。

紛れもない事実。


そんな…
傷つけた俺に対しての言葉。

俺の体を心配する言葉…


俺はまた、思ってもみなかった中川の言葉に驚いてしまった。



どこまでも優しい中川…。

傷つけた俺を心配する…


優しい中川…。




未だかつて、そんな女はいなかった。






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