一番星に祈る
すると、犬が思いっきりジャンプした。
大きな体からは想像できない、高くて軽やかなジャンプ
その犬は飼い主に雪玉が当たる前に、雪玉をキャッチした。
「す…すげぇ。」
俺と真はあっけにとられた間抜けな顔で、その犬を見た。
あの犬…
俺の全力投球の玉をキャッチしやがった…。
しばらくその思いがけない出来事に我を忘れていた。
「ハナ大丈夫?びっくりしたぁ。さすがだねハナ!ありがとう!」
飼い主の声に我に返り、俺はその女と犬のもとへ駆け寄る。
「すいません!大丈夫でした…か」
…え?
……中川?!
犬の散歩をしていたのは中川だった。
俺は言葉が出なくなり、固まった。
私服姿の中川…
初めてだからわからなかった。
やべぇ…心臓が…
「赤坂くん!わあ久しぶり!元気だった?」
中川は俺に笑顔を向けた。
犬は俺に向かって、威嚇している。
きっと雪玉を飼い主に投げつけられたことで、敵だと思っているのだろう。
お前の飼い主に投げたんじゃねぇよ…
「こらハナ!この人は悪い人じゃないよ。威嚇しちゃだめ!怒るよ?」
中川の言葉に、ハナと呼ばれるその犬は大人しくなった。
しつけの行き届いた犬だな…。