とらべりんぐトリオ
これは俺がまだ生きていた頃の事。

俺には恋人がいた。

大好きだった。

いや、今も大好きだ。

毎日が幸せだった。

でもある日、俺は思ってしまった。


『俺が離れていっても、彼女は平気なんじゃないか』って。


彼女はいつも素っ気なくて、本当に俺の事が好きなのかって疑ってしまったんだ。

そういう性格の女だったんだが、俺はたまらなく心配になってしまった。

だから試してみた。

わざと彼女にわかるように浮気したんだ。

少しでも、こっちを向いて欲しかった。

「離れないで、そばにいて」って言って欲しかった。

なのに…














彼女は自殺した。

俺を道連れに。

俺のバカ。

彼女はずっと俺を想っていてくれたのに。

俺が愛想を尽かしたと本気で信じて

絶望して

追いつめられて

死を選んだ。

俺が離れていくのがイヤで、悲しくて、寂しくて。

ずっと一緒にいたくて。




気がついたら一人で三途の川にいて、ピエロに賭けを持ちかけられた。

彼女は先にファンタジアに行ったと聞かされて、ためらいなくこっちに来た。


俺は彼女を早く見つけ出して、誤解を解きたい。

傷つけてゴメンって謝りたい。

俺が唯一愛しているのは、お前だけだって伝えたいんだ。

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