とらべりんぐトリオ
「ところで、先ほどのネコ人間はどこへ?姿を見ませんでしたが。」

シアは王女を連れ立って、会議室へ向かっていた。

「えっと…。お話が済んだから地下牢に帰ってもらったの。いいコだから、出してあげてよ。」

「ご冗談を。このような騒ぎを起こした賊ですよ。解放などありえません。」

近頃、王女は本当におかしい。

仕草、表情、動き。全てが違う。

なぜだ?

何が起こったんだ?

「なんで?私が信用できないの?」

困ったように、上目遣いでこちらの目をのぞきこんでくる。

彼女のこんな目は初めて見た。

「まさか。しかし万一の事があってはいけませんので。」

「万一の事なんかないから大丈夫だってば。」

まただ。

王女はこんな根拠のない自信を持たなかった。

いつだって理論的だった。

今の王女も、悪人なわけではない。むしろ以前よりお人好しになった。

しかし、城内に潜り込んだ賊にすら憐れみをかけるようでは困る。

国を背負っていくには、全てを許す聖人よりも、腹に一物抱えた古狸の方がいいのだ。

それに、とシアは思う。

僕は寂しい。

目の前に王女はいる。

しかし、彼女は変わってしまった…
< 57 / 86 >

この作品をシェア

pagetop