とらべりんぐトリオ
アケビの上に降りかかっていた水はさらに増し、今や城の廊下は流れるプールのようになり始めている。

「うーん、ここまでやっちゃうかぁ。」

「なにを呑気に言っているのです!」

フウカは迫り来るその水から逃げていた。

シアに担がれ、家来達と一緒に。

「大丈夫だよ。危なくないから。」

「これのどこがでございますか!?」

全速力で走るシアの肩の上で、俵のように横向きにされたフウカは完全にリラックスしている。

「だってユ…じゃないや。えっと、これやってるのがネコさんだからだよ。」

「余計に心配です!やはり賊の仕業ではないですか!」

「なんで信じてくれないのかなぁ?」

「なぜ信じられるのですか!?」

叫ぶシアに、家来の一人が怒鳴る。

「ダメだ!追いつかれる!シア、王女を離すな!結界を張るぞ!」

家来達は隊列を組み、呪文を唱える。

『護れ!』

突如現れた半透明な障壁に激突してきた水は、轟々と流れる川のようにまで成長していた。

「わあ!すごい!水族館みたい!」

危機感無くはしゃぐ王女に呆れかえりながら、シアの視界の端で何かが動いた。

そちらを見ても何もない。

しかし、水の中で何かが泳ぐように通り過ぎたのを、確かに見た。
< 60 / 86 >

この作品をシェア

pagetop