とらべりんぐトリオ
「どした?」

ポン、と肩に手が置かれた。

振り返ればいつ入ってきたのか、見慣れない男の人がいる。

サラサラなロングヘアをポニーテールにまとめていて和服姿。腰には刀を差している。

時代劇に出てくるさすらいの剣士みたい。

「アケビ?」

「正解。どうだ?イケメンに化けたつもりなんだが。」

げっ、泣き顔見られた。

「似合わない。アンタには斬られ役の小悪党がお似合いだよ。」

出てってくれないかな。こんなとこ見られたくない。

「泣きながらだと毒吐いてもかわいいって新たな発見だな。ツンデレみたいだぞ。」

「誰がいつアンタにデレたの。妄想なら頭の中にしまっといてよ。っていうかサルビアは?一緒にいたんじゃなかったの?」

「アイツなら買い出しに行った。俺もちょっと表に出てるわ。」

アケビは部屋から出て行こうと私に背を向けてから、よく通る声で言った。

「俺達はみんな独りだ。
独りぼっちなやつらが
寂しくないように
助け合えるようにって集まったのが俺達だ。
だから、いつでも助けになるぞ。困ったら相談しろ。」

ドアが閉まって足音が遠ざかる。

私は照れくさくてこそばゆくて、アケビに聞こえないように返事をした。

「…ありがと。」
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