とらべりんぐトリオ
私は話した。

王女が仲間だった事

連れ出せなかった事

夢にピエロが出てきた事

まだ見つけていない仲間が記憶を失っているかもしれない事

「あの子は私に『助けて』って言ったの。けど私は何もできなかった。力づくで拉致ってこれば良かった。記憶のない仲間を探す方法もわからないし…私どうしたらいいの?」

絶対に逃げなきゃ、と言っていた。

会いたかったとも言っていた。

逃げたくても逃げ切れず、ずっともがき続けてやっと私と会えたのに、私は尻尾巻いて退散してしまった。

イサナは、どうしているだろう?

今、どうすればいいかもわからない

過去に何があってここにいるのかもわからない

もちろん、これからどうなるのかもわからない

そんな状態に陥っていることがわかっていながら、私にはなにもできない。

「なるほど。王女の異変はそういうわけだったのな。納得。」

アケビが落ち着いた態度でいてくれて助かった。

私は頭が真っ白なところから、少しずつ正常に戻ってこられる。

しばらく考えて、アケビは続ける。

「それは正しい選択だと思うぞ。頭を失えば国は混乱する。王が世襲制なとこは特に。お前は、未来の国を守ったんだ。」

「違う…っ」

それは違う。

私は逃げたんだ。

戦えなかった。

助けられなかった。

「本物の王女を探すんだろ?ならサルビアが帰ったらすぐ出発だな。」

ニカッと笑って、頭をわしわしかき混ぜてくる。

元がスライムだからなのか、ちょっとひんやりしていて気持ちいい。

「その前にお願いがあるの。」

「なんだ?」

相談にも乗ってもらって、その上お願いなんて図々しいけど

これだけは譲れない。

「私、強くなりたい。戦い方を教えて!」
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