他がために悪はある
他がため
身も心も、他人で汚れていた。
他人を殺し、殺した残骸が体を犯す。
其は、血潮の軍人。
数多の屍を踏み越えし、徘徊する黄泉であり、常世に招かれし成れの果て。
戦いにおいて、敵はあり。
闘いにおいて、敵はなし。
生物を無生物に変えては、咆哮をあげ。そこで初めて気づこう。
――まだ、生きている。
そうやって其の者は、自分を振り返る。生きている自分を振り返る。
前を向いて、また血潮を浴びるために――
< 1 / 12 >