Liberty〜天使の微笑み【完】

プロローグ


 私自身、そこまで男運が無いとは思ってなかった。
 けれど、周りから言わせれば、私は酷い人と付き合っている……らしい。



 「俺の言うこと聞いてればいいって言ってんだろ?!」



 今、私はカレの実家にいる。
 もう夜の十一時を回ったというのに、未だ帰らない私を心配して、夜は危ないからとカレの母親に言われたのだけど……カレは、それを無視しろと言った。

 「アイツの言葉なんて聞くことねぇーからな!」

 「で、でも……ここのところ、ずっ」

 「返事は!?」

 「……わかっ、た」

 今のところ、暴力を振るわれたことはない。
 だから、私はカレに対して不満を抱いてはいなかった。――けれど。



 「お前が言うこと聞かないから、アイツがつけあがるんだからな!? いっちょ前に気なんて使うんじゃねぇーよ」




 日に日に、言葉は強くなっていく。
 それでもカレと一緒にいるのは、カレのもことが好きだから。
 ただ、その一身で側にいたはずなのに。



 いつからだろう――カレといることが、苦痛に感じ始めたのは。



 誰かに相談しようとか、そんな考えはなくて。
 それが悪いことのように思え、どんどん内へと溜めるようになって。



 本当に……この時は、それほど酷いなんて思わず。



 自分がDVを受けているなんて……考えもしなかった。
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