Liberty〜天使の微笑み【完】
「本日のメインである服――それがこちら」
パッと、ステージ中央に照明が当てられる。
途端、会場にはさらなる高揚感が漂う。
「女性の憧れ――ウエディングドレスです!」
目の前には、白をメインとした青のドレス。マーメイドタイプのそれは、体のラインをハッキリと強調させる、とてもキレイなドレスだというのに。
それには、他と違う点があった。
「……マネキン?」
その場にいた者、誰もが思った。
今までは製作者か、モデルを用意して披露していたのに。そのドレスは、人形が着ていたから。
「個人的な理由で、この作品はマネキンで披露させてもらいまーす」
マイクを受け取り、橘くんは話をしていく。
「ホントはもっとシンプルでしたが……ちょ~っと予定外のことがあり、こんな感じになりました~!」
笑いながら話をする橘くんに、同じ科の友達は何があったんだ~? とか、前よりいいぞとか、様々な言葉を発する。
「んでもって、こっからはもっと個人的な話なんですけど……持ち時間五分あるんで、たっぷり使いたいと思いま~す!」
その場にいた者は、これから何をするのかと、期待の眼差しを向ける。
橘くんは何度か深呼吸をし、会場が静かになるのを見計らってから、言葉を発した。
「オレ……高校の時から、思ってる人がいます」
思わぬ展開に、視線が橘くんへと一気に集中する。
「ずっと忘れられなくて、他の人といても、違う気がした。――けど、再開した時には既に彼氏がいて」
ははっと笑う声に、失恋したのかぁ~? と、冗談まじりに言う声が聞こえる。それに対応しながら、橘くんは話を続けた。
「だから、この気持ちは抑えよう。言ってはいけないことだと、自分に言い聞かせてたけど。――もう、抑えるのはやめた」
「――――!」
途端、橘くんは私の方を向き、視線を真っ直ぐに合わせた。
もう……何を言われるか、容易に想像出来る。
なぜドレスを作ったのか。
なぜ他人に着せなかったのか。
「あの時から……ずっと、君に惚れてた」
言葉が、体に浸透する。
心臓は、その鼓動を大きくし、頬に、熱が帯びていく。
「今日の時間だけじゃ……足りない」
私の目の前に来ると、片膝を付き、マイクを置く。
「これからの時間……恋人として、オレにくれない?」
しんと、水を打ったような静けさ。
それはまるで、ここには二人しかいないような錯覚さえ思わせるほどで。
やわらかな笑みを浮かべると、すっと、頬に両手が添えられる。
触れられた部分が、熱を帯びて。
自然と、頬に涙が伝っていった。
「――返事、聞かせてくれる?」
答えなんて……決まってる。
だって、私が本当に惹かれていたのは――今目の前にいる、あなたなんだから。