二重人格



私、余計な事したのかもしれない。


今までの私には出来なかった事を初めてした。



私しか知らない場所を初めて彼に教えて。


彼を助けたかった。


彼の喜ぶ顔が見たくて、彼の笑ってる顔が見たくて。


私があんな場所に案内したせいで、彼をもっと思いつめさせてしまった。

私はお姉ちゃんも彼も自分も傷つけてしまった。

自分が変われると思った自分が馬鹿だったんだ。




「『ただいま』」


一言も話さないまま家に着いていた。


「おかえりー、二人一緒だったんだー

遅かったね、何してたの?」


お母さんは当然いつもと同じで優しい笑顔をして家に迎えいれる。

五秒の沈黙の末、口を開いたのは私だった。


『がっ、学校が長引いちゃってさー』


「長引くって、もう10時過ぎよ?」


不思議な顔をしてるお母さんはやっぱり優しい顔をしてる。

昔から怖い顔をして怒鳴られた事は一度もない。
注意なら何回もあるけど…。


『あー、先生の手伝い…なかなか帰らせてくれなくてさー
本当に困っちゃうよ、新しい担任』


私の演技は上々だった。

お母さんは困った顔をして私を心配してくれた…そんなお母さんを見たら、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


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