二重人格



「で、ヒロキは?」


お母さんはお皿を洗う続きをしながらそうサラッと言う。


「っ」


『そこでたまたま会った』


私はそう何気なく言う。
嘘は上手い方ではない…だけど、今日は何故かスラスラと嘘を並べられた。


罪悪感はもちろんあった。

さっきからヒロキのテンションは相変わらず下がりっぱなしで…見ているのも辛い。


私の心も凄く苦しかったけど、そこは私の明るさでわざと隠した。


『あれ?
お姉ちゃん帰ってたの?』


良いタイミングでお姉ちゃんが二階から階段で下りてくるのを見つけ私はそう言う。



「あんた遅くない?
っていうか、またヒロキと一緒だったの?」


冷たくそんな事を言い放って階段を下りる。
相変わらずの感じだった。


『たまたまそこで会っただけー

ねぇ、お姉ちゃん会社大変なの?』


一階の奥の部屋に入って部屋着に着替えながらそう言う。

ヒロキは何をしているのかさっぱりわからなかったけど、その事は考えたくなかった。


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