二重人格



袋をぐるぐる振り回したまま、体育館に着いた。


こんな早く学校に来たのは初めてだ。

どんな行事でも朝練には参加しない人だったし、毎日ギリギリに行くのが習慣だったから。




体育館には誰もいない。


たった一人の体育館。


私はバスケ部倉庫にそっと入って、靴を脱いだ。

何も聞こえない体育館。


悲しくなんかない。そう何回も自分に言い聞かせながら机の上にヒョイと座った。



極力家族の事は考えずに足をふらふらっとさせて、コーヒー牛乳の紙パックにストローを通す。





ランランラン…ー


ランララー…


ラララー…



鼻歌を歌っても何も変わらない。

余計に寂しくなってパンをちぎって食べる。




寂しくなんかない。





ガラガラガラッ


突然扉が開く音がしたけど、私はびくともしなかった。
むしろ驚いていたのは入ってきた相手の方。



「わっ!!
びっくりしたー。
何してんの?」


背が高くて肩幅の狭い彼がぶら下げるショルダーバッグは肩からすぐ落ちそうになっていた。


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