二重人格



『朝練?』


タケの問いかけにわざと無視して私はコーヒー牛乳を飲んだ。


「あぁ…」


頭にハテナが浮かんでいるようなタケの顔はなんだか面白くて可愛かった。


『こんなはやいんだ…』


「まぁ、こんなに早いのは俺だけかな」



そう言って、バッグを勢いよく椅子の上に乗っけた。


『皆来ちゃうよね?
もう行くよ』


「別にいても大丈夫だよ」


行くって言っても行く場所なんかなかった。
悔しいけど、私のいる場所はここしかないのだ。


「なんかあった?」


気づいたらタケはバスケのユニフォームに着替え終わっていた。


『別に…
なんもないよ?』


嘘をついた。
だけど、そんな嘘信じる人なんか誰もいない。

だいたいこんな時間からここにいるなんて変だし。
そんな事自分でもわかってる。


「あっそ
では、ごゆっくり~」


だけど、やっぱりタケは深入りしなかった。

いつもこいつは私の事を察して何も聞かない。

変に気を使うところがあるのだ。



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