君に捧ぐ嘘
「帰るよ、アスナ、また明日来るよ」


憂いをおびた少年の瞳は、私をひどく混乱させた。


「あなたは私の何なのよ?」


「彼氏だよ」


ぽつりと彼は言った。


彼氏だったのかこの人は。知らない・・・。


「あなたは彼氏だったんだ?」


「だった?なんで過去形なんだよ。今もそしてこれからも俺は、お前を・・・アスナを・・・あ、愛してるに決まってるじゃないか!」


「ごめんなさい、知らないの、あなたのことを・・・」


なぜ、こんなに胸がしめつけられるような感覚に襲われるんだろう?


どうして?


「もう、こないで・・・あなたを見てると私がつらい」


呆然と立ち尽くしたまま彼はふらりと病室から出ていった。


なぜ?

私はこんな

言葉を

言ってしまったの?
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