君に捧ぐ嘘
彼が来なくなってから、十日過ぎた。


午後になると窓から見える湖を何時間も眺めていた。青い湖を見ていると、神経が和らいでいくのがわかる。あの水に一度だけ触れたい。欲求がつのるばかりだ。


今日はシーツ交換の日だった。めんどくさいな。・・・でも、何で、あの時、あんな言葉を彼に言ってしまったのだろう?


なぜ?


自分に問いかける?


答えなんて出やしないのに。


「アスナさーん」


看護婦がにこやかに私に笑いかけてきた。


「何ですか?」


「ソウマリクトさんという方が面会希望しています。面会されますか?」


あ、彼かもしれない。リクトっていうんだ・・・。


「面会します」


勇気を出して言葉に出した。
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