君に捧ぐ嘘
自販機の前に彼は、そう、私の彼氏だった人はいた。


「リクトさん?」


「さんづけかよ、今更」


寂しそうに彼は、頭をかいた。


「リクトさ・・ん、いやリクト、この前はごめん、もう来ないでなんて言って」


「気にしてないよ」


屈託のない笑顔が私には眩しすぎて、まともに彼を見れない。


「もう来ないかと思った」と、私はうつ向き、上目使いに言った。


「お前が俺を忘れても、俺は忘れないよ、ジュース飲むか?」


「いらない・・・」


「なあ、主治医から特別に外出の許可をもらったんだけどさ、行きたいところないか?」


私は何の迷いなく、「湖」と、呟いた。
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