君に捧ぐ嘘
「ずっと好きだった、アスナのこと。今もこれからも、もう兄貴はいないんだ。俺はまぬけなピエロを演じてもお前が欲しかった」


「俺と結婚してほしい」


そよ風が、湖全体を震わせ、私の心も震わせた。


「私には記憶がない、あなたのお兄さんも、あなた自身さえも」


「これから二人で築いていこうよ、未来を」


「私は・・・」


リクトは困る私を見て、そっと私の肩を抱きよせた。


「過去なんてもう関係ない。大事なのは今だ」


「そうかもしれない、あなたが私にはしてくれたこと、忘れないよ。いつか記憶がもどる時までかもしれないけど・・・」


「いいんだ、それでも。そばにいることしかできない、俺がお前にできることなんだ、たったひとつのね」


あなたと供にすること、生きていくこと、わたしはあなたの、リクトのために今を生きる。


それが、あなたのためにできる唯一のことだと思う。


いいのかもしれない。


記憶がもどる時、あなたさえ、そばにいてくれるなら。


すべてに答えなんてない 。


不確かな未来へ、何かを刻み込むなら、ここから始めるしかないんだ。


スタートラインにたっただけ。


生きることはあなたのためにできること。


「ありがとう・・・」


使いふるされた言葉に意味なんてないのかな?


すべてに答えなんてないよね?


夕日に問いかける。
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