手の平から
井上は



「ベタだけど……」


と言うとシルバーのリングを香奈にはめた。
もちろん薬指に。



「ありが…とうね……」



香奈は耐え切れずに嬉し涙を流した。
私はつられないよう手の平をつねった。



香奈と井上の腕時計の秒針がまったく同じように時を刻んでいた。
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