総長が求めた光 ~Ⅰ序章~【完】
「おい、ヒサー。この縄といてー。」
水面を引っ張られながら、アサが言う。
「お前がレナに痴漢しねぇっつうんだったら考えてやってもいいぞ。」
「考えるだけかよ。てか痴漢じゃないしー。本能に忠実なだけだ・・あぼぼぼぼ。」
ヒサが無言でアサの頭を海に沈める。
しかも無表情だ。
けっこー怖い。
「ぶはーー!!死ぬかと思ったー!」
ようやく解放されたアサが目をぱちくりさせる。
「ほら、もう下りろ。」
気づくともう浅瀬まで来ていた。
「なんだ。まだこの体制がいいのか?」
にやりとイジワルな顔をしながらヒサが言う。
「違うもん!!」
あたしはヒサの方からピョイっと下りた。
ヒサはシレっとした顔をしていてなんだか腹が立つ。
―――――バサッ―――――
突然視界が白くなったかと思うと、体に温かさを感じた。
後ろから少し大きめのTシャツを着せられたのだ。