総長が求めた光 ~Ⅰ序章~【完】
離れた距離
いつものようにバス停で寝ようとしたとき、地面が揺れるのを感じた。
地震とかそういうのじゃなくて、地鳴り。
それはたくさんのバイクによる。
あたしはガバッと起き上って周りを確認する。
地鳴りは近くまで来ると突然止んだ。
近くと言ってもあたしから見える範囲ではない。
「なんだ・・・。過ぎ去ったのか。」
1週間たったけど、あたしは未だにここがどこだかわかってなかった。
まさかここが天神連合の縄張りだなんて思ってもみなかった。
だから、
「探したっ・・・・・!!レナ・・・・・。」
「お、お兄ちゃ・・・・ん・・・・」
お兄ちゃんが驚きと焦りの顔をしながらあたしを抱きしめたときは心臓が止まりそうだった。
エンジンも切らずに止められたバイクが虚しく高いマフラー音を出していた。
あたしは知らずに涙を流していた。
ただ。
それが何の涙なのかはわからなかった。