総長が求めた光 ~Ⅰ序章~【完】
ふわりと笑う口からは八重歯が見えた。
「・・・シュウ・・・。」
眠たそうな顔で、オレンジ色の前髪をかき上げながらまた、ふわりと笑う。
「物覚えがいいね。」
さっき“物覚えが悪い奴は嫌いだ”とか言われたんですけど。
「で、さっきの質問。どっか行くの?」
色素の薄い目を細めながら聞いてくる。
「あぁ・・・・おは」
言おうとした途端。
「逃げるの?」
低い声で、シュウがあたしの言葉を遮った。
“逃げる”?
ここから?どこに?
あたしにはもう帰る場所なんてないのに。
今更どこに逃げろというのだろう。