機械とヒト
あるとき、所長は大きな液晶の前に呼び、ある映像を見せた。画面には、建国50周年記念に、王朝が行うパレードの映像が映っていた。
ちょうど映っていたのは、次期トップの姫、アサヒだ。
国民たちに微笑みかける姿は、まさに太陽。イサムはその笑顔に惹かれた。
「所長、体温が上昇、胸部に圧迫感を感じます。システムエラーでしょうか。」
「イサム、姫を見て、どう思ったかい?」
「はい、彼女を見て、実際に会いたいと強く思いました。そして、あの笑顔を見たとたんに、症状が。」
「それはね、恋慕という感情だよ。ココロプログラムのうちのひとつだ。」
「恋慕…ですか。」
「プログラムが慣れてくれば、よく解るようになるから、安心しなさい。」
「はい…。」
イサムは胸に手を当て、不思議そうな顔をした。
「(今までの喜怒哀楽に比べて、難しい感情だなぁ…。)」
この時はまだ、少し機械っぽさが残るイサムであった。
そしてこの数ヶ月後、姫は捕らわれるのだ。