機械とヒト

あるとき、所長は大きな液晶の前に呼び、ある映像を見せた。画面には、建国50周年記念に、王朝が行うパレードの映像が映っていた。

ちょうど映っていたのは、次期トップの姫、アサヒだ。

国民たちに微笑みかける姿は、まさに太陽。イサムはその笑顔に惹かれた。


「所長、体温が上昇、胸部に圧迫感を感じます。システムエラーでしょうか。」


「イサム、姫を見て、どう思ったかい?」


「はい、彼女を見て、実際に会いたいと強く思いました。そして、あの笑顔を見たとたんに、症状が。」


「それはね、恋慕という感情だよ。ココロプログラムのうちのひとつだ。」


「恋慕…ですか。」


「プログラムが慣れてくれば、よく解るようになるから、安心しなさい。」


「はい…。」


イサムは胸に手を当て、不思議そうな顔をした。

「(今までの喜怒哀楽に比べて、難しい感情だなぁ…。)」


この時はまだ、少し機械っぽさが残るイサムであった。











そしてこの数ヶ月後、姫は捕らわれるのだ。
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop