機械とヒト
所長曰く、アサヒ姫はウチュウの科学者によってココロを具現化され、奪われたらしい。

以前からウチュウ国の王、ギンはヒトが持つココロを欲していて、自分にふさわしいヒトを探していたのだ。


「具現化されたココロが戻らない限り、姫はココロのない......言うならばこの子達のような状態だ。」


所長は目線を後ろにいるアンドロイドたちに向けた。皆一様に感情のない目をしている。


今は姫もこの鉄の塊たちと大差ないのだ。


唯一の違いといえば、ヒトのぬくもりがあるかどうかだ。


イサムは自分の側で虚ろな目をしている姫の手をそっと握った。


「...........っ!!!」


イサムの機械の目からは涙が流れた。アンドロイドだからぬくもりはないが、ココロからの涙だ。


姫は暖かかった。


自分たちアンドロイドとは違う、ヒトのぬくもり。


この姫が、もう二度と笑うことはないのだろうか。

俺に『恋慕』を教えてくれた、あの笑顔。大好きな笑顔。


そんなわけない。


こんなに暖かいヒトが、笑顔を見せないわけがない。


仮に今、ココロを失っていても。


この時イサムに一つの決意が生まれた。


「所長、俺に姫の家臣をさせてください。」


「イサム....?」


所長は突然のイサムの涙と決意に戸惑う。


「俺が、姫のココロを取り戻します。」

「待て、ココロは今、おそらくウチュウ国にあるんだぞ!?」



大国ウチュウに忍び込むのは至難の技。

ましてや国王の中にあるココロを取り戻すなど、不可能な話だ。


「いいえ。必ず姫のココロは取り返しにいきます。でも今は、姫に感情を思い出させて見せます。」


つまり、イサムは、自分が姫の側にいることでココロのことを教えたいのだ。



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