はなぼうっ!
高校生になりました。





 透けるような青空。

 舞い散る淡い桜の花弁。

 真新しい制服を身に纏いながら歩く、まだあどけない感じの高校生達。



 ──今日は四月七日、県立花森高等学校の入学式である。









「こーたろーちゃーん!!」

 場所は変わり、ここは花森高等学校から徒歩二十分程の場所にある七階建てのマンションの五○三号室。

 入ってすぐ右にある襖を開けながら、ひとりの少女が楽しそうに未だ部屋の中で布団にくるまっている少年の名を呼んだ。

 彼女は田中 実希(たなか みき)。
 今年高校に上がる十五歳で、とにかく明るさが取り得な性格をしている。

 見た目は真っ黒な長い髪に、くりっとした丸い目。
 周りからは『犬だ』『犬だ』と言われ続け自分の顔にコンプレックスを持ってはいるが、愛嬌があり可愛い部類に入るだろう。
 ──確かに美少女とは呼べやしないが……。



「なんだよ……まだねみー……って実希ィィィ!?」


 そしてようやく枕から重そうに頭をあげたこの少年は、仁徳寺 虎太郎(じんとくじ こたろう)。
 親同士が知り合い。 マンションでお隣同士。 そんな理由からずっと当たり前のように一緒にいる幼なじみである。

 寝起きのせいかボサボサの赤茶髪は、実希の要望で短いため寝癖はそんなに見られない。
 顔立ちは同年代男子に比べれば幼く、身長も155センチの実希よりも3センチ程大きい程度である。

 ちなみに『仁徳寺』だなんて仰々しい名字を持ってはいるが、家が寺を経営してるわけはなく、両親共に普通の会社員だ。





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