はなぼうっ!
花森高校防衛隊。
──夜、九時。
実希は自室の整理中に出てきたとある映画を鑑賞していた。
主人公は五歳児の少年で、うるさそうなお母さんと足の臭いお父さんとイケメン好きな妹と白い犬の一家を中心に、春日部という街でドタバタするアニメである。
実希は幼い頃からサザエさん一家より、色んな冒険をする野原一家に憧れ、中学に上がるまでは虎太郎と一緒に毎週見ていた。
見なくなっている今では、まだ続いているのかは知らないが、久々に見てみるとやっぱりそれは面白かった。
そしてこの映画は最後にとてつもなく感動する。
大人達が洗脳され、子供達だけが置き去りにされる中で、主人公とその友達達四人──春日部防衛隊が無事大人達を元に戻すというストーリーだ。
──たった五歳の子供達が、こんなに頑張れるんだ……。
そう思うと実希の目からは涙が止まらなかった。
「実希も……ぐすっ……見習わなきゃ……うぅ」
そして最後のエンドロールを見ながら、すぐ横にある携帯を手に取った。
虎太郎とお揃いの型のこの携帯は、ピンクのグラデーションといいデコメの使い易さといい、兎に角実希のお気に入りなのだ。
ちなみに虎太郎のはシルバーで、つい先週虎太郎の母と三人で買いに行ったばかりだ。
そんなお気に入りの携帯を開くと、すぐに電話帳を開き『こたちゃん』を探した。
昨日までは中学の友達だけで三十人程しか入っていなかったのに、よっぽど実希が面白かったのか、今日だけで二十人程の情報が追加されてしまった。
クラスの人数が三十人前後だったから、もう三分の二のクラスメイト達とは連絡先を交換したことになる。
「……~もうっ! こたちゃんだけ後でスピードダイヤル入れとこ!」
探すのに手間取い、ようやく見付けたときにはすでに五分は経っていた。
そしてブーブーと文句を言いながら、実希はようやく虎太郎に電話が掛けられたのだった。