はなぼうっ!
実希がアニメを鑑賞しているその頃、虎太郎は一人葛藤していた。
「サッカーか……」
内容は、今朝あった電話の内容である。
相手は岸谷という一つ上の先輩で、虎太郎が中学のはじめの方だけサッカー部に入ってた時に仲良くなった先輩である。
もっとも二学期になる頃には実希が男子に目を付けられる事を危惧して辞めてしまっているのだが、岸谷は当時から虎太郎のキーパーセンスを買っていたのだ。
それで虎太郎が自分と同じ花森高校に入ってくるという噂を聞き、今朝、虎太郎の予想通りにサッカー部勧誘の電話が来た。
サッカー部なんて人気のある部活、放って置いても虎太郎より経験のある上手い人間が入ってきそうな気もするが……。
「あー……どうすっかな」
虎太郎は体を動かすのは嫌いではない。
そしてサッカーはわりかし好きな部類に入ってくる。
だからサッカーをやることに対しては何の嫌悪も無いのだ。
問題は一つ。
虎太郎にとって最大の悩み、それは実希だった。
実希が「好きな人が出来たら頑張るよ!」と言ったのだから、恋人を作る気が皆無というわけでは無い。
そして実希の事だから、特別嫌いな人では無い限り告白されれば断る理由も無く、とりあえずオーケーしてしまうか、はたまた「どこかに行くのに付き合ってくれ」とでも言われたのだと勝手な勘違いをしてオーケーしてしまうか……。
とりあえず考えるのが極端に苦手な実希は、深く考えるという事をしないだろう。
もしかしたらそれで実希にとっての運命の相手というものが出来るのもしれないが、それすらも虎太郎にとっては危惧する事の一つだった。
実際問題、とりあえず虎太郎は実希が自分の元から離れていくのが嫌なだけなのだ。
「あーっ!」
こうして自分の独占欲の強さにまた虎太郎が頭を悩ませたとき、
──♪~♪♪~♪♪
携帯の着信音が響いた。