激甘王子様


非常階段へと繋がる階段を上がれば一つのドアが見える。


あたしは、恐る恐るドアノブに手をかけゆっくり右に拈った。


あ、会いたぁ!!


…てかなんでこんなに緊張してんのよ!!

有り得ない!!

相手は変態野郎よっ!!

なんでこんなに心臓がバクバクするのよぉー!!

重い足取りで、バクバク鳴りやまない胸の鼓動を抑え、廉の待つところへ向かう。


………


………

あれっ?


いない


ギュッ。

そのとたん、あたしの身体を強く抱く腕が背中に当たった。

「れ…ん?」


「会いたかった」


「え?」


「椎菜に触れたかった」

あたしの耳に唇をくっつけて甘く囁く廉。

「やぁっ…」

「誘ってんの?」

「は、離して」

これ以上は無理…そう思ったのに廉はズルイ。


「そんなにオレが嫌い?」


廉はどこか寂し気にポツリと言った。

あたしは、背中から胸下まで回された廉の腕をギュッと握ろうとした、けどその手はいとも簡単に廉から捕まれた。


「なーんてな?相変わらず、隙だらけなんだよ」


廉はそう言うと、掴んだ腕をグイッとひっぱり、あたしの身体を回転させた。



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