メリアと怪盗伯爵
「そうだ! ねえテレサ! アダム・クラーク男爵が帰られるまで、このまま待たせてもらうことはできないかしら??」
テレサは呆れたように鼻息をついた。
「仕方無いわね・・・。旦那様がいらっしゃらないけれど、今夜はもうここに泊まっていきなさいな。旦那様が戻られるまでは、わたしもこの屋敷でお帰りを待つことになっているし」
メリアは慌てたようにテレサに言った。
「駄目よ! ここでいいわ。勝手なことをして、あなたまでお叱りを受けることになったら大変だわ」
「いいえ、こんなところでモールディング伯爵の遣いの方を何時間も待たせたとなったら、それこそお叱りを受けてしまうわ? いいから、客室をすぐに用意できる。旦那様がお戻りになるまで、あなたはそこで少し休んでいて」
テレサにそう説得されて、メリアはどういう訳か、懐かしいアダム・クラーク男爵の屋敷で一晩過ごすこととなったのだ・・・。