メリアと怪盗伯爵

「??」

 メリアは音のした方をじっと目を凝らした。
 
(・・・気のせいかしら・・・??)
 何も見当たらなかった為に、メリアは背を向けて客室へと戻りかける。
 

『パタン』


 今度ははっきりと、小さくはあるが扉の閉まる音が耳に入った。

(誰か、他の侍女でも残っていたのかしら・・・)
 不審に思い、メリアはもう一度後ろを振り返った。

 メリアの見つめる先は、屋敷の中でも一番奥の部屋。そして、地下室へと続く階段のある部屋だ。

「まさか・・・ね・・・??」

 そう呟き、メリアはランプを手に持ち静かに奥の部屋へと足を進める。
 こんな時間に、誰もあんな部屋を使用する使用人も侍女もいない筈だ。
 だとしたら、風か何かで開いていた扉が自然に閉まったのかもしれない、とメリアは思った。

 そっと奥の部屋の扉を手にかける・・・。
 ギギギギ・・・
 古くなった扉が嫌な音を立てて開く。

 
< 102 / 220 >

この作品をシェア

pagetop