メリアと怪盗伯爵
「その通り。けれど、今から話すことは上流階級の人の中でも、ごく一部の人しか知らない情報なんだ」
メリアは、できることならそんな重要な事柄を知らないままでいたいと願った。知ってしまえば、きっとこれからずっと、それをずっと隠し続けなければならないというプレッシャーを背負っていかねばならないからだ。
「はい・・・」
怯えながら、メリアはぐっと膝の上で拳を握り締めた。
そんなメリアを気の毒に思ったのか、パトリックがふうと溜息を溢す。
「やっぱり・・・、メリアにこの事実を話すのは酷すぎる・・・。彼女にはあまりに重すぎるよ」
それは、エドマンドへ向けてのパトリックからの意見だった。
「それを言うにはもう遅い。メリアは既に一部の情報を俺達から聞いてしまっている。それに、彼女に手紙を持たせたのはお前だぞ、パトリック」
パトリックは自らの失態に気付き、深く目を閉じた。
「そうだね・・・。僕が彼女に手紙を持たせてしまった・・・」
「つまりは、もう彼女は半分はこの事柄に関与してしまっているということ。中途半端な情報ほど危険なものは無いんだ。このままでは、メリア自身にも危険が及ぶ」
エドマンドの話に、メリアはもう後戻りはできないのだと悟った。
そして、パトリックも・・・・・・・。
「お前が言いにくいのなら、俺から話そう」
エドマンドは腕組みを解き、利発そうな瞳をメリアに向けた。
「はい・・・・・・」
パトリックが黙り込んでしまったので、メリアは自分で返事をした。