メリアと怪盗伯爵

「今回の手紙とアドルフ・デイ・ルイス侯爵との関係は・・・??」

 手紙の中身を知らないメリアには未だ腑に落ちない部分があった。
 つまり、今回パトリックからアダム・クラーク男爵に渡すよう頼まれた手紙のことだ。

「あの手紙は、実はデイ・ルイス侯爵から預かっていたものだったんだ。彼とアダムは裏で繋がっていた。・・・というよりは、アダムが彼に利用されていたと言った方が適切なのかもしれないけれど・・・」
 パトリックは、悲しげにそう話した。
 アダム・クラーク男爵とは、古くから家同士の繋がりが深かったこともあり、それなりに関わりのある人物だったのだ。

「僕達はそのことを以前から知り、アダムを通じてデイ・ルイス侯爵の尻尾を掴もうと計画していた。そんなときだ、デイ・ルイス侯爵が僕にアダム宛ての手紙を預けてきたのは・・・」
 二人の表情は険しい。

「お二人は、デイ・ルイス侯爵とアダム・クラーク男爵が繋がっていることを知り、その預けられた手紙を何も知らないような顔をしてわざと見送ったんですね。尻尾を掴む手掛かりになるかと思って・・・」

 パトリックはメリアの淹れたティーを口へ運ぶと、疲れた表情で頷いた。
「そうなんだ。そのつもりだった・・・。でも、デイ・ルイス侯爵が一枚上手だったようだ」
 
尻尾を掴まれるよりも前に、先に自らアダム・クラーク男爵と縁を切ってしまったのだ。アダム・クラーク男爵の容疑を全て女王イザベラに流すことで、女王イザベラのデイ・ルイス侯爵への信頼が高まる上に、同時に自らの悪行さえもすっかり洗い流してしまう。デイ・ルイス侯爵という男の抜け目の無さが、まさにこのことによく現れている。

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